VTuberファンの世界には独特のマナーや用語があります。
その中でも「鳩行為(はとこうい)」という言葉を耳にしたことがある方もいるでしょう。
配信者のチャット欄で「鳩はやめてください」と注意されている場面などを見て、初心者の方は「鳩?」と疑問に思うかもしれませんね。
本記事では、ホロライブを例にVTuber文化における「鳩行為」とは何かを解説し、その歴史やファン活動への影響、そして配信者や運営が取ってきた対応策について説明します。
1. 鳩行為とは何か(定義と名前の由来)
「鳩行為」とは、生配信中に今配信しているVTuberとは関係のない他の配信者の話題や情報を視聴者が持ち出し、コメントしてしまう行為のことです。
例えば、あるVTuberの配信中に視聴者が「○○さん(別の配信者)があなたのことを○○と言ってたよ」と伝えたり、「△△の配信から来ました!」とコメントしたりするのが典型的です。
こうした行為は「伝書鳩」のようにメッセージを運ぶ様子から、ネットスラングで「鳩」とも呼ばれます。
言葉の由来は昔の通信手段である伝書鳩(ハトが手紙を運ぶ役割)にちなみ、配信界隈ではメッセンジャー的な視聴者を指す言葉として定着しました。
「鳩」と略されることが多いですが、「鳩行為」や「伝書鳩」と言っても意味は同じです。
要は配信者間の情報を視聴者が中継してしまう行為で、本人達の間で直接やり取りされるべきでないメッセージを勝手に運ぶことを指します。
場合によってはポジティブな内容(「○○さんがあなたを褒めていたよ」等)を伝える人もいますが、多くの場合は煽り目的であったり、余計な心配や混乱を招いたりするため、基本的に「鳩」は嫌われる行為だと覚えておきましょう。
実際、配信者が「鳩いらないよ」「他の配信の話はやめてね」と注意する場面もしばしば見られます。
2. VTuber文化の中で鳩行為が問題視されてきた歴史
VTuber文化が発展する中で、「鳩行為」は早い段階からマナー違反として認識されてきました。
前身であるニコニコ生放送などの配信コミュニティでも、他の配信者の話題を勝手に持ち込む行為は嫌がられ、「伝書鳩」として敬遠される風潮がありました。
VTuberが流行し始めた2018年頃には、既に配信者同士で「鳩行為はNG」という暗黙の了解が共有されつつあり、一部のVTuberは自身のファンに向けて鳩行為をやめるよう呼びかける事例も出ています。
ホロライブにおいても、グループの成長と共にこの問題は重視されました。
ホロライブ所属タレントの多くは配信の概要欄(説明文)に「鳩禁止」と明記しています。
これは他の配信者に無断でメッセージを届けたり、名前を出したりしないようファンへ注意するものです。
コラボ中や特別な企画以外では、話題に上がっていない他のメンバーの名前や配信状況をコメントするのはマナー違反だという認識が浸透しています。
実際のエピソードとして、ホロライブの人気VTuber宝鐘マリンさんの配信で鳩行為が問題になったことがありました。
マリンさん(通称「船長」)が配信中に席を外して長時間戻らなかった際、心配した一部視聴者が他の同時配信中のホロライブメンバー(猫又おかゆさんなど)のチャットに「船長が戻ってこない」と伝えてしまいました。
後に戻ってきたマリンさんは、自分の留守中にファンが“鳩”を飛ばしていたことに気付き、配信内で注意喚起を行いました。
このように善意からであっても他所で「伝言」をしてしまう行為はルール違反であり、当の配信者から直接注意されるケースもあるのです。
VTuber界全体を見ても、にじさんじなど他グループ含め「鳩行為禁止」は共通のマナーとして定着しています。
たとえ仲の良いVTuber同士であっても、視聴者同士が勝手に情報を持ち出して交流させることは避けるという考え方が根付いてきました。
これは企業の垣根を越えた文化であり、ライバー(配信者)達自身がファンに呼びかけたり、SNSで注意喚起した歴史があります。
結果として現在では、「鳩行為=迷惑行為」という認識が古参ファンの間では常識となり、新規ファンにも共有されるよう努められています。
3. ファン活動や視聴体験への影響
鳩行為は、ファンのコミュニティや視聴者としての体験に様々な悪影響を及ぼします。
まず配信の雰囲気が乱れる点が挙げられます。
配信内容と無関係な他配信者の話題を持ち込むと、チャット欄の空気が一変し、本来の盛り上がりから逸れてしまいます。
その配信者のことを知らない視聴者は置いてけぼりになり、「誰の話?」と困惑するでしょうし、場合によっては名前を出された側の配信者にアンチ(否定的な人)がいると荒れる原因にもなりかねません。
逆に誰もが知っている有名な配信者の名前であっても、コメントを見た視聴者がそちらに興味を持って移動してしまい、現在の配信の集中力や同時視聴者数が下がってしまう恐れもあります。
次に誤情報の拡散という問題があります。
視聴者が伝聞で持ち込む情報は断片的で前後の文脈が欠けていることが多いため、意図が正確に伝わらないリスクがあります。
いわゆる伝言ゲームのように、最初の発言とはニュアンスが変わって伝わってしまい、結果的に悪評や誤解を生むきっかけになる可能性があります。
例えば「○○さんが△△について怒っていたよ」という鳩コメントがあったとしても、それが冗談交じりの軽い発言だったのか、本当に怒っていたのかは文脈次第です。
こうした不確かな情報を受け取った配信者は反応に困りますし、確かめるために配信を止めて確認しに行くわけにもいかず、配信の流れが阻害されてしまいます。
さらに、配信者自身や他のファンへの心理的な影響も無視できません。
他の配信者の名前が急にコメントに出ると、今配信中のVTuberからすれば戸惑ったり気が散ったりします。
「今、自分の配信よりそっちの話をするの?」と寂しい気持ちになることもあるでしょう。
場合によっては視聴者から聞かされた情報によりプレッシャーを感じたり、何か対応しなければと焦ってしまうこともあります。
特にデリケートな内容(例えば誰かの引退やトラブルなど)を鳩されると、リアクションに困り場が凍り付くことすらあります。
ゲーム配信においては、鳩行為はネタバレや不公平にもつながります。
ホロライブではよくメンバー同士で同じゲームを別視点でプレイする企画がありますが、その際に他視点の情報をコメントで教えてしまうと、本来起こるはずだったサプライズや駆け引きが台無しになってしまいます。
例えばサバイバルゲーム「RUST」や鬼ごっこ的な企画で、「○○があっちに逃げましたよ」「今△△を作戦中らしいですよ」といったコメントをすると、配信者は本来得られない他視点の知識を得てしまいます。
これはゲームの公正さを欠くばかりか、視聴者としてもハラハラドキドキする展開が損なわれ、視聴体験の面白さが減ってしまいます。
そして何より、鳩行為はファン同士のトラブルの火種にもなります。
鳩コメントをする人と、それを嫌がる人との間でチャット欄が荒れたり、注意し合うことで更にコメントが流れると本末転倒です。
最悪の場合、「○○のファンはマナーが悪い」とレッテル貼りされ、そのライバー本人や他のファンにも迷惑がかかります。
このように鳩行為は本人には悪気がなくても、多方面に負の影響を及ぼす可能性が高いのです。
ファン活動を楽しく健全に続けるためにも、鳩行為は避けるべきだと心得ておきましょう。
4. 配信者や運営が取ってきた対応(ルール、警告、モデレーションなど)
ホロライブをはじめとするVTuber運営・配信者側も、鳩行為に対して様々な対策や呼びかけを行ってきました。
まず基本として、各配信者はチャット欄のルールを事前に示しています。
ホロライブ所属のVTuberの場合、動画の説明文に「●禁止事項:他の配信者さんに迷惑をかけない(伝書鳩行為はやめる、話題に出ていない配信者の名前を出さない)」等の記載がほぼ共通して見られます。
配信開始前の待機画面や配信冒頭で注意事項として読み上げられることもあり、公式には明文化されていなくともコミュニティ内ではしっかり共有されているルールです。
実際の配信中でも、鳩的なコメントが流れた際には配信者自らが注意する場合があります。
ホロライブの獅白ぼたんさんが「他所で私の名前を出すのもやめてね。言われた方も困るし絶対ダメだよ」といった旨を語ったことがあるように、多くのVTuberが配信中に改めて鳩行為禁止を呼びかけています。
英語圏のVTuberや海外勢でも基本的な考え方は同じで、「他のストリーマーの話題は控えてほしい」というルールを設けているケースが一般的です。
ルールを破るコメントがあった場合、モデレーター(管理者)やbotが削除したりタイムアウト処置をすることもありますし、ひどい場合はコメント欄で周囲の視聴者が「鳩はNGだよ」と即座に注意してくれることもあります。
もっとも、理想的には注意のコメントすら流さずスルーすることが推奨されています。
相手にせず流してしまうのが一番荒れない対応だからです。
運営側が公式にアナウンスを行う場面もあります。
ホロライブでは大型コラボ企画やゲームイベントの際、視聴者へ向けて改めて「鳩行為禁止」のお願いが出されることがあります。
例えば2025年にホロライブ内で行われた「RUST」サーバー企画では、参加メンバーの兎田ぺこらさんとAZKiさんが事前配信で「他の配信者の視点で得た情報をコメントしないように」と重要なお願いを発表しました。
「〇〇が逃げたよ」「△△したほうがいいんじゃない?」といったコメントはゲームの面白さや配信者のモチベーションを損なう可能性があるため、「たとえ言いたくなってもグッと堪えて見守ってほしい」と強く呼びかけています。
この配信では視聴者に対し「自分の推しの視点を楽しむことに集中してほしい」というメッセージが伝えられ、多くのファンもSNS上で「鳩禁止ルールは絶対守ろう」と賛同の声を上げました。
また、一部のVTuberは鳩行為へのスタンスをSNS等で明言することもあります。
「私は気にしないよ」と公言する人もごく稀にいますが、だからといって相手の配信で自分の名前を出していいことにはなりません。
仲の良い配信者同士であっても、相手の許可なく名前が出されるのを嫌う人もいますし、自分が原因で推しの配信が荒れてしまっては本末転倒だからです。
多くのVTuberは「自分のリスナーさんが他所で迷惑をかけるのは望まない」と考えており、ファンもそれに応える形で節度を守っています。
総じて、配信者とファンの信頼関係によってこのマナーは支えられています。
運営や公式ルールでガチガチに取り締まるというより、配信者からのお願いとファンの良識によって鳩行為は抑制されているのです。
もし本当に伝えるべき緊急事態(配信者の身に何かあった等)が起きた場合でも、基本は鳩行為ではなく運営の公式連絡手段や適切な方法で対応するのが望ましいとされています。
大切なのは、「推しのためを思うなら鳩行為はしない」というファンマナーをみんなで共有し、健全な配信環境を守っていくことです。
管理人のつぶやき

要約すると、鳩行為ダメゼッタイ
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