ホロライブとにじさんじの違い

VTuber界を代表する二大事務所と言えば、ホロライブプロダクションとにじさんじです。
どちらも多くの人気VTuberを抱え、国内外に熱狂的なファンコミュニティを形成しています。
本記事では、VTuberファンの皆さんに向けて、この二つの事務所を 「タレント数とマネジメント戦略の違い」「ファン層の傾向とコミュニティの形成」「海外展開のアプローチと成功度合い」、そして「全体的な文化・雰囲気の違い」という観点で深掘り比較します。
ホロライブが“女子校”的でにじさんじが“共学”的とも言われるその通説の真相にも触れながら、両者の魅力と特色を探っていきます。

タレント数とマネジメント戦略の違い

まず規模面で両事務所を比較すると、 ホロライブは少数精鋭、にじさんじは大所帯 という対照的な方針が見えてきます。
2024年8月時点でホロライブ(女性グループ)には約68名、男性グループのホロスターズが26名ほどのVTuberが所属しています。一方のにじさんじは国内外あわせて約238名ものライバーを擁する巨大グループです。
メンバー数の差は歴然としており、運営の戦略もそれに伴って異なっています。

ホロライブは 「選抜メンバーを少人数に絞り込み、その代わり一人ひとりを手厚くプロデュースする」 方針を取っています。
実際、ホロライブでは各タレントに専属マネージャーを付け、歌唱力やダンスのトレーニング機会を提供し、オリジナル楽曲デビューを支援するなど、アイドルさながらの徹底した育成・売出し体制が敷かれています。
マーケティング分析の記事でも、『ホロライブを運営するCover社は少数精鋭かつ、タレント毎にマネージャーを付けて歌唱やダンスをトレーニングし、オリジナル楽曲を提供して確実に離陸させるアイドルプロダクション方式。一方、にじさんじを運営するANYCOLOR社はタレント各自の実力に任せ、優秀者をサポートする芸人事務所方式』と指摘されています。
言い換えれば、ホロライブは厳選した才能を 「箱」 として売り出すアイドル色の強い運営方針と言えるでしょう。

対するにじさんじは 「幅広く人材を集め、多様性を尊重した上で、人気の出たライバーを重点的にサポートする」 方針です。
オーディションの合格基準も比較的開かれており、VTuber志望者を多数受け入れて各人の個性に任せた活動を促しています。まさに芸能事務所が芸人を抱えるようなスタイルで、いわば才能の 「総合商社」 として数多くのVTuberをデビューさせているのです。
にじさんじでは新人ライバーの研修機関として「Virtual Talent Academy (VTA)」を設け、将来有望な人材を早期に発掘・育成してからデビューさせる試みも行われています。これはまさにマンモス共学校が中等部から生徒を迎え入れるようなものと言えるでしょう。

こうした戦略の違いは成果にも表れています。ホロライブではデビュー後しばらくして軌道に乗れず埋もれてしまうタレントはほとんど存在せず、登録者数30万人以下のVTuberが一人もいない状況です。一方、にじさんじでは所属メンバーが非常に多い分、登録者数30万未満のライバーも約88名存在しており、人気の度合いは玉石混交となっています。ホロライブ運営が “箱推し”(グループ全体のファン化)を重視して各タレントを確実にスターに育て上げる方針なのに対し、にじさんじ運営は “個推し”(個々の人気)に任せて才能の取捨選択を市場原理に委ねている、とも言えます。

ファン層の傾向とコミュニティの形成

次に、両事務所の ファン層(視聴者層)の特徴 を見てみましょう。
ホロライブとにじさんじでは、ファンの性別比や年齢層にも大きな違いが認められます。

あるデータマーケティングの調査によれば、ホロライブファンの約94.8%が男性で占められていました。一方、にじさんじファンの約55.9%は女性だったという結果が報告されています。この違いは、ホロライブの所属タレントが女性アイドル中心であるのに対し、にじさんじは男女様々なライバーが在籍していてコンテンツに性別の偏りが少ないことが一因と分析されています。つまり、ホロライブは 男性ファンに好まれやすい 傾向が強く、にじさんじは 女性ファンも巻き込みやすい 土壌を持っていると言えそうです。

年代や職業層にも差があります。一般にホロライブのファン層は20代後半以降の社会人男性が多いとされ、一方のにじさんじは10~20代の学生や若手社会人層の支持が厚いと見られています。実際、両社の公式ファンクラブサイト訪問者データでも、ホロライブは「一般社員」の割合が高く管理職が少ないのに対し、にじさんじは「学生」の割合がより大きいことが確認されています。社会人ファンが多いホロライブは経済力のある層に支えられ、学生の多いにじさんじは若年層の文化として浸透している側面があるようです。

両グループの ファンコミュニティの形成 にも違いが見られます。ホロライブはメンバー数が比較的少なく結束力が強いため、ファン同士も「箱推し」的にグループ全体をまとめて応援する傾向が強いです。ファンはホロライブという箱そのものの物語や世界観を共有し、公式企画にも一体感をもって参加します。たとえば毎年開催される「ホロライブスーパーエキスポ」や大型ライブイベントでは、ホロライブファン全体が集結し盛り上がる様子が見られます。公式の掲示板的存在であるRedditのホロライブコミュニティやTwitter上のハッシュタグ活動など、ファン同士がグローバルに情報交換し団結しているのも特徴的です。

一方、にじさんじはメンバー数が非常に多いため、ファンコミュニティは細分化 される傾向にあります。基本的には各ライバーごと、あるいはユニットごとにファンコミュニティ(◯◯組、◯◯リスナー等)が形成され、推しごとに固まっていることが多いでしょう。にじさんじ全体を箱推しするファンもいますが、ホロライブに比べると一人一人の推しに集中するスタイルが目立ちます。もっとも、にじさんじにもファン全体が一体となる「箱イベント」が存在します。その代表例が夏の風物詩となった「にじさんじ甲子園」です。にじさんじ甲子園は、にじさんじ所属ライバー達が野球ゲーム内で高校野球大会を模した大規模企画で、毎年大きな話題となっています。人気ライバーが監督役となりチームを率いるこの企画には、普段は別々の推しを応援しているファンも集結し、にじさんじファン全体で盛り上がります。その熱狂ぶりは凄まじく、決勝戦の配信同時視聴者数が一時30万人を超えたとも報じられています。このように、にじさんじでは“大箱”イベントで一体感が生まれ、ホロライブでは日常的に箱推し文化が根付いている 点がコミュニティの違いと言えるでしょう。

海外展開のアプローチと成功度合い

グローバル展開の戦略にも、ホロライブとにじさんじで明確な違いが見られます。
ホロライブは英語圏を中心に世界的な人気を獲得しており、対してにじさんじはアジア圏(特に中国)で強みを発揮しています。

ホロライブは比較的早い段階から海外志向を強めていました。2020年には英語圏向けの新グループ「ホロライブEnglish (ホロライブEN)」を立ち上げ、本格的に海外市場への進出を開始します。英語圏初のホロライブENメンバーたちは、デビュー直後から欧米のアニメ・ゲームファン層に熱狂的に受け入れられました。その象徴がGawr Gura(がうる・ぐら)です。サメの少女をモチーフにしたこのVTuberは英語圏を中心に人気を博し、YouTubeチャンネル登録者数は 445万人超とVTuber世界一の登録者数 を記録しています。ホロライブENの成功により、ホロライブ全体が海外知名度を一気に高めました。

この追い風を受けて、運営会社のCover社もグローバル展開を加速させています。2023年にはアメリカ・ロサンゼルスに現地法人「COVER USA」を設立し、2024年7月より北米拠点での事業展開を本格開始しました。現地スタッフによるファン対応やイベント企画が動き出し、海外ファンコミュニティとの距離を一層縮める体制を整えています。実際ホロライブは、欧米のアニメコンベンションへの出演やグッズ展開、英語公式SNSの運用など、多方面で海外ファン獲得の施策を講じてきました。2023年7月にはホロライブEN初の単独ライブ「Connect the World」をロサンゼルスで開催し大成功を収め、さらに2024年にはニューヨーク、ジャカルタ、シンガポール等を巡る初の ワールドツアー開催 も発表されています。こうした積極的な海外展開により、ホロライブは 「VTuber文化の世界輸出」 を牽引する存在となっています。

一方、にじさんじの海外展開は アジア圏への深耕 という色合いが強いです。にじさんじもホロライブ同様に海外向けグループを立ち上げており、まず2019年に中国・ビリビリ動画と提携した 「VirtuaReal」プロジェクト を開始しました。これは中国のVTuberグループで、Anycolor社が現地企業と協業する形で多数の中国人VTuberをデビューさせたものです。VirtuaRealの成功により、にじさんじは中国市場で大きな存在感を示し続けています。実際、中国のVTuberブームの背景にはにじさんじとビリビリの影響が大きいと指摘されており、日本発のにじさんじキャラクターが中国の視聴者を惹きつけてファンダムを拡大してきた側面があります。さらにビリビリ側もVTuberの収益化を支える投げ銭・ギフト機能を整備しており、にじさんじライバーたちは中国からの厚い支援を受けやすい環境が整っています。

しかしホロライブとは対照的に、にじさんじは一度失敗を経験しつつ戦略転換した部分もあります。実はAnycolor社もホロライブ同様、インドネシアや韓国といった市場にローカライズした海外支部(にじさんじIDやKR)を展開していました。ところがこれら海外支部は思うように成果を上げられず、2022年に本社が各国支部を統合・吸収する形で再編を行っています。この統廃合により、海外勢も含め 「にじさんじ」ブランドに一本化 し直す方針に切り替えました。結果として現在残っている公式な海外プロジェクトは前述の中国向けVirtuaRealと、もう一つが英語圏向けの 「NIJISANJI EN」 です。

NIJISANJI EN(にじさんじEN)は2021年5月に初の英語圏ライバーがデビューして以降、着実に規模を拡大してきました。当初は女性VTuberグループから始まったにじさんじENですが、特筆すべきは 男性VTuberグループの大成功 です。2021年末にデビューした英語圏男性5人組「Luxiem(ルクシム)」は、中国をはじめとする東アジアの女性ファン層に爆発的な人気を博しました。Luxiemのメンバーである Vox Akuma(ヴォックス・アクマ) は、その人気ぶりを象徴する存在です。彼は配信でのスーパーチャット(投げ銭)収入が桁違いに多く、2022年のYouTube世界年間スーパーチャットランキングにおいて約1億4千万円を集めてVTuber部門第1位 に輝きました。この記録的成功は「日本のみならず海外のファンを幅広く取り込んだことが勝因」と分析されており、にじさんじENのグローバル戦略が実を結んだ例と言えます。現在ではにじさんじENにも30名以上のライバーが在籍し、英語圏やアジア圏のファンを繋ぐ架け橋となっています。

対照的に、ホロライブは中国本土で大きなトラブルに見舞われた過去があります。ホロライブはかつて中国向けに「ホロライブCN」を展開し中国人VTuberもデビューさせていましたが、2020年にホロライブ所属タレントが配信中に台湾に言及したことをきっかけに中国で炎上し、以降中国市場から事実上撤退してしまいました。この出来事により、以降ホロライブは英語圏やその他の地域に経営資源を振り向け、逆ににじさんじが中国で優位に立つ形となっています。結果として現在の海外展開は、ホロライブ=欧米・東南アジア重視、にじさんじ=東アジア(特に中国)重視という住み分けが生まれていると言えるでしょう。

全体的な文化・雰囲気の違い(ホロライブ=女子校? にじさんじ=共学?)

最後に、両事務所の 文化的な雰囲気やカラー の違いについて比較します。
ファンの間ではよく「ホロライブは女子校、にじさんじは共学のマンモス校」といった比喩で両者の雰囲気が語られます。この表現が示す通り、ホロライブとにじさんじは グループ内の人間関係や配信ノリの空気感 においても対照的です。

ホロライブは、主要メンバーが女性で占められていることから(ホロライブプロダクション全体としては男性グループのホロスターズも存在しますが)、まるで女子校のクラスメイト同士のような独特の仲間感が醸成されています。メンバー同士の関係性は姉妹・同級生的で、配信でも和気あいあいとした 女子会ノリ が目立ちます。運営方針としても 「アイドル路線」 を掲げており、タレント同士の絆や清楚なイメージを大切に育んでいるように見受けられます。実際、ホロライブの公式設定では「アイドル」を強調しており、ライブイベントでも全員がステージ衣装で歌い踊る演出がなされています。ファン側もそうした“尊い”アイドルとしてのホロライブを愛でる傾向が強く、メンバーの日常的な交流エピソードから百合的(ガールズラブ的)な盛り上がりまで、女子校ならではの雰囲気を楽しんでいるのです。

一方のにじさんじは、男女問わず幅広いライバーが集う 共学校のような賑やかさ が魅力です。にじさんじ所属ライバーには男性も女性もおり、お互いフラットに交流しています。配信上での異性間のコラボや掛け合いも日常茶飯事で、そこにはまるでクラスの男子と女子が入り混じって盛り上がっているような ザックバランとした空気 が流れます。にじさんじでは下ネタやギャグ、ドッキリ企画など バラエティ色の強い配信 も多く、良くも悪くも自由奔放な校風と言えるでしょう。各ライバーがそれぞれの個性を前面に出し、ときに 教師(運営)の目を盗んだイタズラ のような突飛な企画も飛び出すのがにじさんじ流です。こうした多様性あふれる雰囲気は「エンタメの文化祭」に例えられることもあり、ホロライブの整ったアイドルコンサートとはまた異なる魅力を放っています。

また、男女の接し方についても両者で文化の差があります。ホロライブでは長らく、男性VTuber(ホロスターズ)と女性メンバーの公式な絡みは必要最低限に留められてきました。これはアイドルとしてのイメージ維持や、一部ファンの過度な干渉を避けるための配慮とも言われています。いわば 「男子禁制の女子校」 的な環境で、男性の存在は遠ざけられてきたのです(実際ファンの比喩でも「ホロスターズ=男子校」とされるほどです)。一方、にじさんじでは男女コラボが当たり前に行われ、男女ペアでユニットを組んだりカップリング的なノリが生まれたりすることも珍しくありません。ファンもそれを一つのエンタメとして受け入れており、男女間の絡みを楽しむ文化が根付いています。この点でも、ホロライブは男子を寄せ付けない女子校の空気、にじさんじは男女混合のクラスメート同士のノリという違いが見て取れるでしょう。

さらに、コンテンツ傾向や活動方針にも両グループのカラーの差が現れています。ホロライブは前述の通りアイドル的な活動が多く、メンバー個人の配信内容もゲーム実況や雑談に加えて歌やダンス、ライブリハーサルの様子など 「アイドルらしさ」を感じさせる企画 が頻繁です。オリジナル楽曲のリリースや定期的なライブ公演など、まさにアイドル事務所的なコンテンツ展開が主軸です。一方のにじさんじは、メンバーごとに配信ジャンルが千差万別です。ゲーム実況はもちろん、麻雀やTRPG、声劇、料理配信やお酒雑談まで、ライバーの個性に応じた多彩なコンテンツが生み出されています。にじさんじ公式もテレビ番組風の企画や大喜利大会、24時間配信イベントなどバラエティ企画を多数打ち出しており、笑いとサプライズに満ちた「何でもアリ」の文化を育んでいます。言わば、ホロライブが「王道アイドル部」なら、にじさんじは「学園祭のなんでも屋」とでも表現できるでしょう。

結論:二大グループがVTuber文化にもたらすもの

ホロライブとにじさんじの比較を通じて、それぞれが全く異なる強みと魅力を持つことがお分かりいただけたかと思います。
タレント戦略では、ホロライブは少数精鋭によるアイドル育成で成功し、にじさんじは多種多様な才能を束ねて業界全体を盛り上げています。
ファン層では、ホロライブは主に男性社会人を虜にし、にじさんじは学生や女性ファンにも深く浸透しています。コミュニティの在り方も、ホロライブは箱推し団結力、にじさんじは個性ごとの盛り上がりという形でそれぞれに根付いていました。
海外展開に目を向ければ、ホロライブは英語圏でVTuberブームを牽引し、にじさんじは中国圏で独自の地位を築くなど、アプローチの違いが功を奏しています。
そして何より文化・雰囲気の面で、ホロライブがアイドルクラブが放課後に集う女子校のような空気を持つのに対し、にじさんじは色とりどりの個性が交差する共学の学園のような賑やかさを持っていると言えるでしょう。

どちらが優れている、どちらが劣っているという話ではありません。ホロライブとにじさんじ、それぞれが異なる方向性でVTuberという新時代のエンターテインメントを切り拓いてきた 二つの軌道 なのです。ホロライブの清楚で尊いアイドル青春劇も、にじさんじのカオスで愉快な群像劇も、どちらもVTuber文化に豊かさと広がりを与えてくれています。ファンの皆さんも、自分の好みに合った「箱」や「推し」を見つけていることでしょう。ぜひこれからも二大事務所それぞれの物語を追いかけながら、VTuberシーン全体を盛り上げていきましょう。ホロライブとにじさんじという 両輪 があるからこそ、VTuberという文化はさらに遠くまで走り続けていけるのです。

管理人のつぶやき

管理人はもちろんホロライブ推し

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