音楽レーベル「イノナカミュージック」とは

ホロライブはカバー株式会社が運営するVTuber事務所で、多くのバーチャルアイドルが所属しています。
その中でもかつて存在した音楽レーベルが「イノナカミュージック」です。
本記事では、イノナカミュージックの設立経緯や所属タレントの概要、音楽活動と代表作、ホロライブ本体との関係、そしてレーベル統合に至る経緯と現在の状況について、初心者向けにわかりやすく解説します。

イノナカミュージックの設立経緯

イノナカミュージックは2019年5月19日にホロライブプロダクション内の独立した音楽レーベルとして始動しました。
ホロライブ初の音楽特化型プロジェクトであり、VTuberのオリジナル楽曲リリースや生歌によるリアルライブ開催に積極的に取り組むことを目的に設立されたものです。
当時ホロライブ運営会社のカバー株式会社は、「ただカッコいい音楽と最高のライブをやる」というコンセプトを掲げ、バーチャルアーティストの育成・プロデュースに注力する場としてこのレーベルを発足させました。
レーベルの主宰プロデューサーにはDJとしても活動するツラニミズ氏が就任し、音楽制作面での指揮を執りました。

レーベル立ち上げ時に発表された所属アーティストは2名でした。
1人目はバーチャルシンガーの**AZKi(アズキ)で、もう1人がアイドルVTuberの星街すいせい(ほしまち すいせい)**です。
AZKiはイノナカミュージック始動以前からカバー株式会社に所属し、音楽活動を展開していたVTuberです。
星街すいせいはもともと個人で活動していたVTuberでしたが、このレーベル設立に合わせてホロライブに新規加入する形で所属が発表されました。
こうしてAZKiと星街すいせいという2人の才能を擁し、イノナカミュージックはスタートを切ったのです。

所属タレント:AZKiと星街すいせい

● AZKi(アズキ)
AZKiはホロライブプロダクション所属タレントの中でも「VSinger(ブイシンガー)」と称される、生歌やオリジナル楽曲の発信を主軸としたアーティストです。
2018年11月15日に「Virtual Diva AZKi」としてデビューし、ホロライブ内でいち早く音楽特化型VTuberの道を切り拓きました。
デビュー当初から8ヶ月連続でオリジナル曲をリリースするなど精力的に活動し、透明感のあるポップな曲調の「AZKi WHiTE」シリーズと、攻撃的で疾走感あふれる「AZKi BLaCK」シリーズという2つのコンセプトで楽曲展開を行ってきました。
BiSHやEMPiREなど数々のアーティストを手掛ける音楽プロデュースチーム「SCRAMBLES」の協力のもと、AZKiはバーチャルな存在でありながらリアルさを感じさせる本格的な楽曲群を次々と発表しました。
その歌声は力強さと情感を兼ね備え、VTuberシーン発の音楽アーティストとして徐々に注目を集めていきました。

AZKiはライブパフォーマンスにも力を注いでおり、3Dモデルを駆使したバーチャルライブを数多く開催してきました。
2019年1月の初ライブ「AZKi 1st LIVE」を皮切りに、VR空間上のライブイベントや配信ライブを積極的に実施し、ファンとの交流を深めています。
「みんなで音楽を止めない」ことを合言葉に複数日にわたるオンラインライブ企画を行ったこともあり、その活動はバーチャルとリアルの垣根を越える挑戦に満ちていました。
デビューからレーベル統合までの約3年間でAZKiが発表したオリジナル楽曲は50曲以上、出演したライブ・イベントも70回以上に上ります。
VTuberシーン全体を見渡してもこれほど多数のオリジナル曲を持つシンガーは稀であり、まさに「音楽活動に特化したVTuber」というレーベルの理念を体現する存在でした。

● 星街すいせい(ほしまち すいせい)
星街すいせいは“永遠の18歳”を自称するバーチャルアイドルVTuberで、歌とアイドルを誰よりも愛する才能あふれる人物です。
2018年3月22日に個人VTuberとして活動を開始し、自身で企画・制作したオリジナル楽曲を発表するなど精力的に音楽活動を行ってきました。
透き通りつつ芯のある歌声と、高いプロデュース能力を併せ持ち、デビュー当初からオリジナル曲を公開しています。
2018年11月に公開した1stオリジナルソング「comet」ではボーカロイドPの*Luna氏を作曲に招き、自ら作詞も担当しました。
続いて2019年3月には活動1周年を記念して2ndオリジナルソング「天球、彗星は夜を跨いで」をリリースし、キタニタツヤ(sajou no hana)氏による楽曲提供で星街すいせいの世界観を広く示すことに成功しました。
このように実力派の音楽VTuberとして頭角を現した星街すいせいは、2019年5月にイノナカミュージックへの加入が発表され、ホロライブ所属の一員となりました。

ホロライブ参入当初、星街すいせいは新しいLive2Dモデルの制作準備などを経て本格的に活動環境を整えていきました。
彼女は「いつか武道館でライブをする」という大きな夢を掲げて日々努力し、持ち前の明るいキャラクターとトーク力で配信者としてもファンを増やしていきます。
歌だけでなくゲーム配信やコラボ企画にも挑戦し、多才な面を発揮しました。
イノナカミュージック所属時代の後半からは新衣装・新モデルで心機一転し、さらに多くのリスナーにその存在を知られるようになります。
VTuber事務所に所属したことで活動の幅も広がり、ホロライブ内外のイベント出演や他タレントとのコラボレーションを通じて、星街すいせいは着実に人気と実績を積み重ねていきました。

音楽活動と代表作

● AZKiの音楽活動と代表曲
AZKiはイノナカミュージック所属期間中、精力的にオリジナル楽曲を制作・発表してきました。
代表的な楽曲の一つ「INTERNET OVERDOSE」ではVTuberシーンの熱狂を歌い上げ、アップテンポで中毒性のあるサウンドが話題を呼びました。
一方で「Inochi」(命)というバラードソングでは、しっとりとしたメロディと心に響く歌詞でAZKiの歌唱力と表現力を示し、ファンに深い感動を与えています。
このようにAZKiの楽曲は多彩で、エレクトロやロックからバラードまで幅広いジャンルを網羅しつつ、一貫して「AZKi」というアーティスト像を感じさせる世界観で貫かれています。

AZKiはまた、他アーティストとのコラボレーションやカバー曲にも積極的でした。
ときのそらをはじめとするホロライブメンバーとのデュエットや、外部のバーチャルシンガーとの合同ライブなど、交流の場を広げることで音楽的刺激を得ていました。
2021年11月には作曲家・瀬名航氏とのコラボレーションEP『恋の宅配便』を発表し、新たな一面を見せています。
さらにAZKiは定期的に開催された自身のライブシリーズ「AZKi LIVE」や企画ライブで新曲を披露し、その都度ファンを驚かせてきました。
レーベル後期にリリースされた楽曲「Overlight」は「3年の活動の集大成」と位置付けられたナンバーで、過去の歩みを振り返りつつ未来へ踏み出す決意が込められています。
この曲を以てAZKiはひとつの節目を迎え、イノナカミュージック時代の締めくくりとしました。

● 星街すいせいの音楽活動と代表曲
星街すいせいも負けず劣らず数多くの楽曲を世に送り出してきました。
ホロライブ所属後初のオリジナル曲となった「NEXT COLOR PLANET」は、2020年3月の配信ライブで発表されました。
この曲はArte Refactによるプロデュースで、キュートでありながらクールなパーティーチューンに仕上がっており、ホロライブに移籍した彼女の新たな門出を象徴する一曲となりました。
以降、星街すいせいはコンスタントに楽曲を制作し、その中でも2021年に発表した「GHOST」は彼女の代表曲の一つとして広く認知されています。
「GHOST」はロックテイストの激しい曲調に乗せて、自らの葛藤や決意を歌い上げた楽曲で、星街すいせいの圧倒的なボーカルパフォーマンスが国内外で高い評価を受けました。
YouTube上でのミュージックビデオ再生回数が短期間で数百万を超えるなど、大きな反響を呼んだ楽曲です。

2021年9月には星街すいせい初のフルアルバム『Still Still Stellar』が発売されました。
このアルバムには彼女のデビュー以来の集大成となる全12曲が収録され、「comet」「天球、彗星は夜を跨いで」「NEXT COLOR PLANET」「GHOST」といった既発ヒット曲に加えて新曲も多数含まれています。
アルバムは各種音楽チャートで高成績を収め、オリコンのデジタルアルバム週間ランキングやBillboard JAPANのダウンロードアルバムチャートで1位を獲得するなど、VTuber発の作品として異例のヒットとなりました。
星街すいせいはこのアルバムを引っ提げて初の単独ライブをオンライン開催し、多くのファンを魅了しています。
さらに彼女は2022年にはYouTubeの著名音楽チャンネル「The First Take」に出演し、自身の楽曲「Stellar Stellar」を一発撮りで歌唱する映像が公開されました。
この動画は公開直後から大きな話題となり、プレミア公開時に16万人以上の同時視聴者を集め、公開3日で500万再生を突破する反響を見せています。
星街すいせいの歌唱力と存在感がVTuberファン以外の層にも届いた出来事であり、彼女のアーティストとしての地位を不動のものとしました。

ホロライブとの関係性

イノナカミュージックはホロライブプロダクション内のレーベルという位置付けでしたが、当初はホロライブの既存グループ(いわゆる○期生)とは別枠で運営されていました。
ホロライブ本体がゲーム配信やバラエティ企画を含めた総合的なVTuberアイドル路線だったのに対し、イノナカミュージックは音楽活動に特化していたためです。
しかし所属タレントのAZKiと星街すいせいはホロライブ全体の一員でもあり、他のホロライブメンバーと同様に公式番組やライブイベントに参加していました。
例えば2019年から開催されたホロライブ大型ライブ「hololive 1st Fes」やその後のフェスティバルでは、AZKiも星街すいせいも他のホロライブタレントと肩を並べてステージに立ちました。
ファンから見れば、2人はホロライブの“0期生”とも呼ばれる先輩メンバーとして認識されており、レーベルの枠を超えてホロライブの象徴的存在であると同時に、グループ全体を音楽面から牽引する役割を担っていたのです。

星街すいせいについては、2019年末にホロライブ内での所属グループ移動(レーベルから本体への転籍)が行われたことで、一層ホロライブとの結びつきが強まりました。
これによりマネジメント体制が他のホロライブタレントと統合され、より充実したサポートの下で活動できるようになりました。
ホロライブの一員となって以降、星街すいせいは様々な同期・後輩たちとコラボ配信を行ったり、公式ユニット企画(例:特定テーマで結成される音楽ユニット)に参加したりと、グループ内での存在感を高めていきます。
その歌唱力から音楽番組や外部イベントへの起用も多く、ホロライブの“歌姫”として社内外から厚い信頼を得るようになりました。

AZKiも2022年のホロライブ合流以降、表向きはホロライブ“0期生”の一人となり、より広い活動を展開しています。
もともと他メンバーとの交流が少なかったAZKiですが、移籍後はホロライブ公式企画への出演やコラボ配信を行う機会が増えました。
ときのそらやさくらみこといった古参メンバーとの音楽番組に出演したり、ライブで共演したりする姿も見られ、ホロライブ全体の一体感の中に溶け込んでいます。
さらにホロライブIDOL PROJECTの楽曲参加など、グループ内プロジェクトにも積極的に関与するようになりました。
このようにイノナカミュージックのタレント2名はホロライブ本体と深く関係し合いながら活動しており、それぞれが音楽面でホロライブブランドの価値を高める存在となっています。

活動終了・統合の背景と現在の状況

イノナカミュージックは約2年半にわたって活動を続けましたが、最終的にはホロライブ本体への統合という形でその役目を終えることになりました。
大きな節目の一つは2019年12月の星街すいせいのホロライブ転籍です。
当時発表された情報によれば、この移籍は「ホロライブへVTuberのマネジメントを集約し、星街すいせいのサポート体制を強化するため」と説明されています。
また、イノナカミュージックとして取り組んでいたイベント事業の拡充を図る狙いもあり、体制見直しの一環として星街すいせいはレーベルを離れてホロライブ所属となりました。
この決定により、イノナカミュージックのアーティストは事実上AZKiひとりとなります。
以降、レーベルはAZKi専属の音楽プロジェクトという形で存続しましたが、少人数ゆえの体制上の課題も指摘されるようになりました。

もう一つの転機は2021年末から2022年初頭にかけて訪れました。
2021年12月、レーベル主宰であったツラニミズ氏がAZKiのマネジメントおよびプロデュース業務から退くことが発表されます。
この発表はAZKiにとって大きな転機となり、それまでの活動方針を見直す契機となりました。
カバー株式会社はサポート体制の変更に伴い、2022年4月1日付でAZKiをホロライブ所属へ移籍させることを決定します。
同時にイノナカミュージックというレーベル名での活動は終了し、約3年間続いたプロジェクトはホロライブ本体へ統合される形で幕を下ろしました。
公式には2022年3月31日をもってイノナカミュージックの活動終了とされ、以降はレーベル名が用いられることはなくなっています。

現在、AZKiと星街すいせいはともにホロライブ所属タレント(ホロライブ0期生)として活動を続けています。
星街すいせいはホロライブ内でもトップクラスの人気と知名度を誇り、音楽活動において数々の華々しい実績を打ち立てました。
2023年1月には2ndアルバム『Specter』をリリースし、こちらも豪華クリエイター陣による楽曲が多数収録された意欲作として注目を集めました。
同時期に披露した「Stellar Stellar」のスタジオ生歌パフォーマンスはSNSやニュースで話題となり、VTuberの枠を超えた音楽アーティストとして評価されつつあります。
そして2024年には待望の初の日本武道館ワンマンライブ開催が決定し、自身の長年の夢を実現する運びとなりました。
2025年2月1日に「Hoshimachi Suisei 日本武道館 Live “SuperNova”」が開催予定であり、VTuberが日本武道館という国内有数の大舞台に立つ快挙として大きな期待が寄せられています。
このように星街すいせいはレーベル統合後も飛躍を続け、ホロライブを代表する歌姫として活躍しています。

一方、AZKiもホロライブ移籍後に新たな展開を見せています。
2022年11月には長年親しんだメインビジュアルを一新し、新衣装・新モデルのお披露目配信を行いました。
これはホロライブで再出発を切ったAZKiの新章開幕とも言える出来事で、ファンからも大きな反響がありました。
ビジュアル刷新後はYouTubeでの定期歌枠配信やShort動画投稿など、従来より積極的に配信活動も行い、新規ファン層の開拓にも努めています。
音楽面では引き続きオリジナル楽曲の制作を続け、2023年以降もコンスタントにデジタルシングルを発表したり、ライブイベントへ出演したりしています。
ホロライブの年次ライブ**「hololive 4th fes」「hololive 5th fes」**などにも出演し、多くのホロライブメンバーと共にステージパフォーマンスを披露しました。
また、ホロライブプロダクションの音楽企画では他のVTuberとユニット曲を歌う機会も増え、AZKiの歌声はますます広い場で響き渡っています。
レーベルこそ消滅しましたが、AZKi自身は「ホロライブのVSinger」として活動理念を貫き、ファンに音楽を届け続けています。

イノナカミュージックが遺したものは大きく、そしてその魂は今もホロライブの中で生き続けています。
AZKiと星街すいせいという二人の歌姫は、レーベルの枠を超えて成長し、ホロライブ全体の音楽クオリティを押し上げる存在となりました。
初心者の方も、ぜひ彼女たちの楽曲やライブを通して、VTuberと音楽が融合したエンターテインメントの魅力を感じてみてください。
イノナカミュージックの歴史を知ることは、そのままホロライブ音楽部門の歩みを知ることでもあります。
これからも進化し続けるホロライブの音楽シーンにぜひ注目してください。

管理人のあとがき

ホロライブを最近知った方の中には「AZKiさんって誰?」「星街すいせいってホロライブ所属じゃない時期があったの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。
この記事を通じて、ホロライブの中でもちょっと特別な立ち位置にいた彼女たちの背景を知ってもらえたなら嬉しいです。

特に印象深いのは、星街すいせいさんが「武道館でライブをしたい」という夢を語り続け、ついにそれを現実にしようとしている点です。
彼女の音楽にかける情熱と努力は本当に尊敬しかありません。
また、AZKiさんの活動も静かに、しかし着実に歩みを重ねてきた歴史があり、どの時代にも彼女なりの表現を貫いてきた姿勢がとても心に残ります。

イノナカミュージックというレーベルそのものはもう存在しませんが、そこに集ったタレントたちが紡いだ物語や音楽は、ホロライブの音楽史の礎となっています。
この記事が、そんな「イノナカミュージックの魂」に少しでも触れるきっかけになれば幸いです。

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