ホロライブと「ストグラ」の関係

ホロライブ所属VTuberと大型ロールプレイ企画「ストグラ(ストリートグラフィティ・ロールプレイ)」との関わりについて、事実にもとづき中立的に解説します。
ストグラの概要から、ホロライブメンバーの参加状況、運営(カバー株式会社)の方針、ファン(特に“ユニコーン”層)の反応、ホロライブにおけるユニコーン文化の位置づけ、そしてタレントの自由性とブランドイメージのバランス、今後の展望とリスクまで、順を追って分析していきます。

ストグラとは何か – 概要と参加VTuberの構成

ストグラ(ストリートグラフィティ・ロールプレイ)は、人気ゲーム『グランド・セフト・オートV(GTA5)』内に構築された大規模な配信者向けロールプレイ企画です。
ストリーマーのしょぼすけ氏が2022年に立ち上げたプロジェクトであり、専用の改造サーバー上で仮想都市「ロスサントス」を舞台に展開されます。
参加者たちはMODで用意された警察官・ギャング・飲食店経営者などの職業に就き、その役職になりきって仮想生活を演じることができます。
この自由度の高い環境で、参加者同士が何をしたいか考えて行動し、日夜さまざまな人間ドラマが生み出されているのが特徴です。

ストグラにはストリーマー、プロゲーマー、VTuber、声優など経歴も属性も様々なメンバーが招かれており、開始以来その人数は数百人規模にも及びます。
例えば声優の中村悠一氏まで参加していることでも話題になりました。
まさに「配信者版スマブラ」とも称される一大コラボ企画で、同時視聴者が10万人を超える日もあるほど注目を集めています。
2024年には東京ゲームショウでストグラ参加配信者によるトークショーが開かれるなど、その盛り上がりは配信界隈全体に広がっています。

参加VTuberの構成としては、にじさんじやぶいすぽっ!、Neo-Porte等の他事務所勢、個人勢などが主体で、にじさんじ所属ライバーや有名配信者グループが多数参加しています。
一方で、ホロライブ所属のVTuberはこれまでストグラ本体には参加していません。
ホロライブは長らく自社内コラボや自前の企画が中心で、外部大型企画への参加には慎重だった背景があります。
ストグラのような他社混合のオープン参加型企画には2024年春頃までホロライブ勢は加わっておらず、代わりに後述する関連企画への参加や独自企画の開催という形を取っています。

ホロライブ勢のストグラ関連参加 – VCR GTAとホロライブGTA

ホロライブ所属VTuberがストグラ本体ではなく関連するGTAロールプレイ企画に参加し始めたのは、2023年中盤以降のことです。
2023年7月および12月に、招待制ゲームコミュニティ「VAULTROOM」主催の期間限定イベント「VCR GTA」が開催され、これに一部ホロライブメンバーが参加しました。
VCR GTAはストグラ同様に『GTA V』を使った大規模ロールプレイイベントですが、期間と参加者を限定したクローズドな企画です。

ホロライブからは7月開催時に常闇トワさん(ホロライブ4期生)などが参加し、12月開催の「VCR GTA2」では以下の6名のホロライブメンバーが参加を表明しました。

  • 夏色まつり(ホロライブ1期生)
  • 夜空メル(ホロライブ1期生)
  • 獅白ぼたん(ホロライブ5期生)
  • ラプラス・ダークネス(ホロライブ6期生/ホロックス)
  • 火威青(ReGLOSS/DEV_IS所属)
  • 一条莉々華(ReGLOSS/DEV_IS所属)

ホロライブ本体から1期生〜最新グループまで幅広いメンバーが名を連ねたことで、多くのファンの注目を集めました。
実際のプレイ中にはホロライブ勢と外部ストリーマーとの交流も多数見られ、普段接点のない異なるコミュニティ同士のコラボレーションが実現しました。
例えば常闇トワさんや獅白ぼたんさんは、人気ゲーム実況者グループとチームを組み、治安維持や犯罪計画のロールプレイに挑むなど、新鮮な絡みが展開されました。

ただし、この外部との大規模交流にはいくつかのトラブルも発生しました。
代表的な例として、夏色まつりさんはVCR GTA2内で男性ストリーマーと性的なニュアンスを含むロールプレイ(いわゆる“大人な動画”の撮影ごっこ)を行い、相手のTwitchチャンネルが一時BANされる事態となりました。
この行為は「やりすぎ」「ラインを超えている」としてSNS上でも物議を醸しました。
幸いまつりさん本人のYouTube配信には影響がありませんでしたが、ホロライブ所属タレントが外部の男性配信者と際どいネタを行うことへの懸念の声が上がったのは事実です。

また、DEV_IS所属の新人である一条莉々華さんも、VCR GTA2への参加に関する発言をきっかけにファンの一部から批判を受けました。
彼女は配信内で酔った状態で「ユニコーンの角が折れちゃっても、ASMRでまたはめてあげる」などの冗談を交えつつ、ユニコーン文化を揶揄するような発言をしてしまい、一部ファンの感情を逆なでしてしまいました。
これにより、コメント欄には応援終了を宣言するコメントが相次ぎ、事実上の炎上状態となりました。

こうした流れを受け、ホロライブ運営は自社主体のGTAロールプレイ企画「ホロライブGTA」を立ち上げました。
2024年9月、「ホロライブGTA(通称ホロGTA)」がホロライブ公式イベントとして開催されました。
この企画は、ホロライブJP・ID・ENから30名以上が参加し、ホロライブ専用に構築されたGTA5サーバー上でロールプレイを繰り広げるというものです。

本企画では、ストグラ本家の開発・運営チームが技術面で協力したこともあり、非常に完成度の高い仮想都市「ホロスサントス」が用意されました。
大空スバルさんが警察署長、宝鐘マリンさんがキャバクラ店員、猫又おかゆさんが整備工場社長など、各メンバーが個性に応じた役職に就き、1週間にわたる即興劇を演じました。

運営側もモラルとトラブル防止に細心の注意を払い、過激な表現は禁止、視聴者による“指示コメント”への注意喚起も行われました。
また、他企画で見られたような過激なロールプレイは一切排除され、全年齢対象で安心して楽しめるイベントとして成功を収めました。

このホロライブGTAの成功は、タレントたちが安全かつ自由に遊びつつ、ホロライブとしてのブランドを守るための運営の意図と工夫が随所に見られる好例と言えます。

ホロライブ運営のスタンス – タレントの自由とブランドイメージの両立

ホロライブを運営するカバー株式会社のスタンスは、「タレントの新たな挑戦を支援しつつ、ホロライブのブランドイメージも守る」というバランス型の方針に基づいています。
ストグラやVCR GTAへの関与からホロライブGTAの開催に至る流れを見ると、初期段階では外部混合企画への無制限な参加を控える慎重な姿勢が見られました。
しかし2023年後半以降は、外部ストリーマーや他社VTuberとの交流を徐々に活発化させる方針へと転じています。

象徴的な動きとして、2023年8月にはカバー社が「HLZNTL(ホリゾンタル)」という新プロジェクトを発表しました。
これは、ホロライブの枠にとらわれず、eスポーツやゲームイベントを中心に、外部のクリエイターやストリーマーと積極的に連携するという方針の下に立ち上げられた新たな展開です。
HLZNTLの趣旨は、「ホロライブの“アイドルとしての魅力”だけでなく、“タレントとしての魅力”を広く届けていく」ことにあります。

つまり、ホロライブ運営は、タレントの新たな可能性を引き出すと同時に、企業としてのリスク管理も意識しつつ、徐々に外部開放を進める方針を選択しています。
この姿勢は、VCR GTA参加にあたってマネージャーとの事前相談があったことや、ホロライブGTAを完全自社企画として開催した点からも明らかです。
コンテンツや出演の自由を認めながらも、配信の安全性やブランドの方向性には管理とガイドラインを適用することで、ファンとの信頼関係の維持を目指しています。

ファンの受け止め方 – 盛り上がりと不安、賛否両論

ホロライブメンバーによるVCR GTAやホロライブGTAへの参加は、多くのファンにとって新鮮で楽しい体験となりました。
普段は見られない箱外の配信者との交流や、即興劇的な展開に対し、TwitterやYouTubeコメント欄では肯定的な反応が多く見られました。
特にホロライブGTAは箱内メンバーのみで構成されたことで、視聴者に安心感を与えつつ、新たな魅力を引き出すことに成功しました。

一方で、外部との絡みに対して慎重な姿勢を取るファン層、特に“ユニコーン”と呼ばれるファン層からは、懸念や批判の声も上がりました。
たとえば「推しがまだ同期とも深く関わっていない段階で、外部の男性配信者と絡むのは違和感がある」という意見や、
「ホロライブが本来持っていた“清楚で安心な箱”という雰囲気が失われていくのではないか」という不安を示す声も見られました。

一条莉々華さんの発言が物議を醸した際には、応援の終了を告げるコメントが上位に並び、ファンの間で賛否が割れた様子が見て取れました。
このように、外部企画への参加は新しいファン層を惹きつける一方で、従来のファン層を動揺させる二面性を持っています。
しかしながら、批判の多くも冷静で理性的なものであり、「推しのやりたいことを応援したいけれど、寂しさもある」という葛藤がにじんでいました。

ユニコーン文化の整理と現在の位置づけ

ユニコーンとは、VTuberやアイドル文化において「異性との接点を一切持たないでほしい」と考える、理想主義的なファン層を指します。
ホロライブは元来「アイドルVTuberプロダクション」として発足し、多くのタレントが「清楚」「彼氏いません」「恋愛経験なし」といったキャラクター性を打ち出してきました。
その結果、ユニコーン的価値観を持つファンとの親和性が高くなり、長年にわたってコアな支持を受けてきたという背景があります。

ただし、2020年以降のホロライブの急成長に伴い、ファン層は著しく多様化しました。
海外展開(ホロライブEN)を含む多言語展開や、他業種とのコラボレーションの増加により、ファン文化にも広がりと揺らぎが生じています。
ホロスターズとの距離の取り方や、コラボの是非を巡ってはメンバーごとの方針に委ねられるようになり、
「ユニコーン向け」「非ユニコーン向け」という区別がメンバーごとに自然と形成されつつあります。

一条莉々華さんがユニコーンに対する冗談を配信中に口にした件では、ユニコーン層の怒りが可視化されましたが、同時に運営と本人は即座に釈明と謝罪を行い、収束に努めました。
また、白上フブキさんや大空スバルさんのように、「男性とのコラボもする」と明言しつつ、それでも高い支持を維持しているメンバーも存在しています。
つまり現在のホロライブは、「ユニコーン文化」を否定せず、それを必要とするファンにはしっかりと応える一方、
それに依存しすぎない広がりを求めてバランスを取っている状態にあるといえます。

今後の展望とリスク分析 – ホロライブとストグラの関係はどう進むか

ホロライブとストグラ(およびVCR GTAなどのロールプレイ企画)との関係は、今後さらに拡大・深化していく可能性が高いと考えられます。
ホロライブGTAの成功によって、ホロライブ内におけるロールプレイ系コンテンツのポテンシャルが証明されたため、
定期的な社内イベントとしてGTAを含む即興劇系の大型企画が継続される可能性は十分にあります。

また、ホロライブとストグラの運営側が技術的協力関係を築いたことで、今後はゲスト参加や特別イベントへの部分的な参加など、
形式を変えての交流も模索されるかもしれません。
一方で、完全に本家ストグラへ合流するとなれば、ホロライブの世界観や視聴者層に対する慎重な配慮が必要です。

そのため、今後の展望には以下のような可能性とリスクが存在します。

【可能性】

  • 外部大型企画(GTA系、VALORANT系など)への選抜参加
  • ストグラとの合同イベントや特別ルール回での共演
  • 視聴者参加型RPイベントなど、より双方向的な展開
  • ホロライブGTAの続編や他ジャンルRP企画(例:学園、SF風など)への応用

【リスク】

  • 外部との過度な接触によるブランドイメージのブレ
  • 過激なネタ、言動による炎上や規約違反
  • ユニコーン層や保守的ファンの離脱
  • 配信マナーやルールのすり合わせ不足による摩擦
  • タレント個人の精神的負荷(炎上や攻撃へのストレス)

ホロライブは、今後もストグラ的な「ロールプレイ文化」の魅力を取り入れつつ、
その世界に飛び込むタレントを守る仕組みと、ファンへの説明・納得のプロセスを強化していくことが求められます。
企画の自由度と安全性のバランス、そして何より“ホロライブらしさ”を維持した上での挑戦が肝要です。

結論 – 多様化するホロライブの未来とファン文化の共存

ホロライブは、ストグラやVCR GTAといったロールプレイ型の外部企画との関係を通じて、新たな可能性を模索し始めています。
これは、閉じたコミュニティからの脱却ではなく、あくまでホロライブという箱の中に「多様なタレント」「多様な表現方法」「多様なファン文化」を共存させるための進化の一歩です。

一方で、ホロライブが大切にしてきた“安心感”や“アイドル性”を求めるファン文化――とりわけユニコーン層の存在を無視することはできません。
彼らの存在はホロライブ初期の発展を支え、今なお多くのメンバーにとって大切な支柱となっています。

ホロライブが今後、ストグラ的な企画やコラボの幅を広げていく中で求められるのは、タレント自身の言葉での説明と対話、
そして運営による安全設計とガイドライン整備、さらにはファン側の多様性への理解と寛容です。

“全員が満足する形”は理想であり困難ではありますが、
“誰もが自分の居場所を見つけられる形”は、工夫と対話によって実現可能です。
ホロライブはその道を、ファンと共に歩もうとしている――そう言える現在地点に、私たちは立っています。

管理人のひとこと

ここまでお読みいただきありがとうございました。
ストグラやVCR GTA、そしてホロライブGTAのようなロールプレイ企画は、見ているだけでも本当にワクワクしますし、タレントさんの新しい一面を知る良い機会にもなっています。

一方で、こういった企画の裏では、応援する側の気持ちや、運営・タレントさん自身の葛藤もたくさんあるのだと改めて感じました。
私自身、ユニコーン的な感覚を理解できる部分もあれば、「今はこういう時代なんだな」と感じることもあり、いろんな立場のファンが共存しているからこそホロライブは面白いのだと思います。

ホロライブという箱の中で、いろんな価値観やスタンスが共存しながら、それでも「好き」という気持ちを軸に応援していけたら素敵ですね。
今後もこうした企画がどんな進化を遂げていくのか、そしてファンやタレントたちがどう向き合っていくのか、引き続き見守っていきたいと思います。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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