VTuber業界を牽引するYAGOO(谷郷元昭)とは?その人物像と功績

YAGOOの人物伝(生い立ち・学歴・キャリア形成)

谷郷 元昭(たにごう もとあき)氏は1973年12月10日生まれで、大阪府高槻市出身の実業家です。幼少期からゲームが好きで、大学時代にはゲームセンターでアルバイトをするほどゲーム業界への関心が高く、新卒ではゲーム会社のみを志望しました。高校は大阪府立茨木高等学校を経て、慶應義塾大学理工学部機械工学科を卒業後、1997年にゲームソフト開発会社のイマジニア株式会社へ入社します。同社ではサンリオと提携したゲームのプロデュースなどを担当し、携帯電話向け公式サイト事業の統括も経験しました。最新技術を追う楽しさをこの時期に実感した谷郷氏は、その後eコマース業界に転職し、ECサイト「@cosme SHOPPING」(当時cosme.com)の立ち上げに携わります。

2005年7月には携帯広告メディア企業インタースパイア(後にユナイテッド株式会社に合併)の創業に参画し、メディア部門の事業責任者を務めました。さらに2008年4月には自身初の起業として株式会社サンゼロミニッツを設立し、日本初のGPS対応おでかけ情報サービス「30min.(サンゼロミニッツ)」を提供開始します。このサービスは順調に成長し、2014年11月に株式会社イードへ事業譲渡されました。一連のキャリアを通じて得た経験から、「社会にインパクトを残すようなことをやりたい」という思いを幼い頃から抱いていたと語っています。実際、谷郷氏は自身を「基本的にコミュ障(コミュニケーションが苦手)」と評しつつも、大きな目標に向かって積極的に挑戦する性格が2度の起業の原動力になっていると明かしています。

2016年、谷郷氏は第二の起業としてカバー株式会社を創業しました。同社設立時には「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」というミッションを掲げ、日本発の二次元エンターテインメントを世界に届けることを目指しています。この新事業立ち上げに際し、前述の経験から着目したのが当時新興だったバーチャルリアリティ(VR)技術でした。試行錯誤の末、「リアルタイムで3Dキャラクターを動かす仕組み」を自ら生み出し、それが現在のVTuber事業へと繋がっていきます。谷郷氏は後のインタビューで「日本発で最先端の二次元エンターテインメント体験を」というスローガンを掲げて2017年9月にVTuber事業を始めたと語っており、これがホロライブプロダクション誕生の原点となりました。

カバー株式会社の創業と成長の歴史

2016年6月13日、谷郷氏は東京都渋谷区に資本金300万円でカバー株式会社を設立しました。創業当初はVR技術を活用したライブ配信システムの開発から事業をスタートし、翌2017年9月7日には同社初となるVTuberとしてときのそらがデビューを果たします。当初「ホロライブ」はスマートフォン向けの配信アプリ名でもありましたが、やがてVTuberグループ全体を指すブランド名へと発展しました(※)。ホロライブプロダクションの運営を軌道に乗せる中で、VTuberという文化自体も徐々に世間に認知されていきます。谷郷氏自身、「VTuberという日本から生まれたカルチャーを世界に広げていく」とのビジョンを示し、コンテンツ事業をグローバル展開する意欲を持っていました。

ホロライブプロダクションは黎明期から着実にタレント数を増やし、個性豊かなVTuberたちが活動の幅を広げていきました。2018年頃から国内で人気が急上昇し始め、2019年にはホロライブ2期生・3期生の活躍やライブイベント開催などでファン層が拡大しました。競争の激しいVTuber業界において、多くの新興事務所が生まれては消える中、カバー社は着実に事業を成長させていきます。2020年には海外展開にも本格的に乗り出し、インドネシアに現地法人「ホロライブIndonesia」を設立、さらに英語圏向けグループ「ホロライブEnglish」を発足させました。同年デビューした英語圏VTuberのGawr Gura(がうる・ぐら)は、デビュー1年でチャンネル登録者数が360万人を超えるなど、海外市場での成功を象徴する存在となりました。こうした取り組みによりホロライブは海外マーケット開拓のパイオニアとして注目され、世界中にファンコミュニティを築いています。

事業規模の拡大に伴い、カバー株式会社は資金調達や組織整備を進め、2022年頃までに業界トップクラスの企業へと成長しました。そして大きな節目となったのが2023年3月27日で、この日カバー株式会社は東京証券取引所グロース市場への新規上場を果たします。VTuberプロダクション運営企業の株式上場は、先行したANYCOLOR社(「にじさんじ」の運営)に続いて史上2社目の快挙となりました。上場時点で公開された業績によれば、同社の売上高は4年間で約14倍に成長し業界全体の市場拡大を牽引しています。谷郷氏は上場に際して「皆様の温かいご支援の賜物」と感謝を述べると共に、創業以来のVTuber事業が世界規模のコミュニティへ成長したことを振り返りました。現在カバー株式会社はVTuberのみならず、自社IPのメディアミックス展開やメタバースプロジェクト「ホロアース」の開発にも乗り出しており、さらなる挑戦を続けています。

※ホロライブプロダクション公式アプリ「hololive」は当初、ときのそら専用の配信プラットフォームとして始まりましたが、その後グループ名として定着しました。

VTuber業界における影響力と功績

谷郷氏が率いるホロライブプロダクションは、VTuber業界の発展に多大な影響を与えてきました。同プロダクションに所属するタレントの累計チャンネル登録者数は急速に増加し、2021年2月時点で3,500万を突破、2021年11月には5,000万を上回り、2022年末には7,000万に達したと報じられています。これはVTuber市場全体が拡大する中でも突出した数字で、ホロライブが国内外で圧倒的な支持を得ている証と言えるでしょう。谷郷氏はForbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2023」において、第3位にランクインする評価を受けています。このランキングでは「ホロライブプロダクション(累計登録者数7,000万人)を運営する起業家」として谷郷氏の功績が紹介されており、エンターテインメント業界における新しいビジネスモデルの成功例として注目されました。

VTuberという文化自体の浸透にも、ホロライブの存在は大きく寄与しています。2020年に世界的なコロナ禍が訪れリアルイベントの制約が強まる中、ホロライブ所属VTuberたちはオンライン上で歌やダンスを披露し、多くのファンに「バーチャルとリアルが重なり合う」体験を提供しました。たとえば2020年12月開催の2日間にわたるオンラインライブ「hololive 2nd Fes. Beyond the Stage」では、28名のVTuberが出演して圧巻のステージを展開し、約5万人の視聴者がリアルタイムで熱狂しました。このようにホロライブはバーチャルアイドルの可能性を示し、コロナ禍で苦境にあったエンタメ業界を盛り上げた存在として評価されています。加えて所属タレントの多彩なコンテンツは、ゲーム実況や歌配信はもちろん、マイクラ内運動会や料理、即興俳句大会、超高難易度ゲームの長時間耐久配信に至るまで多岐にわたり、VTuberのエンターテインメント性を大きく拡張しました。最近では大手コンビニチェーンや食品メーカーとの公式コラボレーションも次々と実現し、その活躍はバーチャルの枠を超えて現実世界の市場にも影響を与えています。

また、ホロライブの成功は世界中のクリエイターや企業にも刺激を与え、VTuberを活用したプロジェクトや他言語圏でのVTuberグループ設立が相次ぐきっかけとなりました。谷郷氏自身、VTuberを「日本発の新たな二次元カルチャー」と位置づけており、将来的には年齢や性別を問わず共通の趣味で繋がれる“楽園”のような仮想空間を実現したいというビジョンも語っています。ホロライブのメタバースプロジェクト「ホロアース」はまさにその一環で、タレント同士やファン同士が交流できる場を作ることを目指した挑戦です。このようにVTuber業界における谷郷氏の功績は、単に一企業の成功に留まらず、新しい文化の創造とコミュニティの形成にまで及んでいると言えるでしょう。

メディアやインタビューでの発言内容

谷郷氏はメディアの取材やインタビューの中で、VTuber業界や自身の経営哲学について興味深い発言を数多く残しています。ホロライブCEOとして知られる一方で、ファンからは親しみを込めて「YAGOO(ヤゴー)」と呼ばれていることについて、本人は「狙ったものではなかった」が「ファンに情報が伝わりやすくなることで結果的にプラスになっている」と前向きに捉えています。この愛称はホロライブ所属VTuberの大空スバルが谷郷氏の苗字「谷郷(たにごう)」を誤読して「やごう」と呼んだことがきっかけで誕生し、以来海外のファンにも広く浸透したネットミームとなりました。谷郷氏は表に出過ぎることのないよう生放送出演は控えめにしていますが(失言防止のためディレイ配信を行うほど慎重を期している)、ファンとの距離を縮めるための情報発信には積極的で、この姿勢がホロライブファンから愛される理由の一つとなっています。実際、公式グッズの宣伝では自らグッズモデルを務めるというユニークな活動も行っており、その紳士的な立ち居振る舞いが話題を呼びました。2023年9月をもって「もうすぐ50歳を迎える」ことを理由にグッズモデル業を“引退”すると発表された際には、多くのファンから労いと惜別の声が寄せられています。

さらに、谷郷氏はVTuber業界の未来について語る中で、メタバースへの期待も口にしています。先述の獅白ぼたん氏とのインタビューでは、「タレント同士、タレントとファン、ファン同士が交流するための空間です」とホロライブが目指すメタバース像について説明し、「いずれは、二次元コンテンツが好きな人にとっての楽園にできるといいな」と夢を語りました。この発言からは、バーチャル空間を活用してファンコミュニティをより豊かにしようとする谷郷氏のビジョンが伝わってきます。谷郷氏は他のインタビューでも「新たな価値創造」に挑戦し続ける姿勢を強調しており、常に先端技術とエンターテインメントを融合させながら世界中の人々に驚きと喜びを届けたいという情熱を持ち続けています。VTuberファンにとってYAGOOこと谷郷元昭氏は、単なる経営者の枠を超え、VTuber文化を共に創り上げていく頼もしいリーダーであり、これからの活躍にも目が離せない存在でしょう。

管理人の感想

個人的に好きなのは「基本的にコミュ障なんですよ」というご本人の発言。めちゃくちゃ親近感が湧きました。
でもその一方で、「社会にインパクトを与えるようなことをしたい」とか「世界に向けて日本発のカルチャーを広げたい」とか、内に秘めたビジョンは本当に大きくて、そのギャップがYAGOOさんの魅力なんですよね。

あと、YAGOOというニックネームの由来が、スバルちゃんの誤読から始まったっていう話も改めて読んで面白かったです(笑)。ファンとしてはすっかり定着している愛称ですけど、あれが「たまたまの言い間違い」だったとは。
それを変に否定せず、むしろ楽しんで、さらには公式グッズのモデルまでやっちゃうYAGOOさん、本当に器が大きいなって思います。

そういえば、「グッズモデル引退宣言」もかなり衝撃的でしたね。
「50歳になるので、引退します」って、あのタイミングとノリで発表されたの、ホロライブらしさ全開でした。VTuberたちが舞台に立っている陰で、経営者がああやってファンに愛される存在になるって、普通じゃ考えられないですよね。

それもこれも、YAGOOさんが「表に出すぎず、それでもちゃんと愛される」距離感を大事にしてきたからだと思います。

VTuber業界って、どうしても「一過性のブームなんじゃないか?」とか「中の人問題」とか、いろんな雑音も多い世界です。
でも、そういう不安定なジャンルにおいて、YAGOOさんが真剣に「新しい文化を作ろう」と挑戦して、実際にここまでの形にしたっていう事実は、何度見ても本当にすごいことだと思います。

そして今後は、ホロアースという新たなステージにも挑戦しているわけですが、これもまた「一発逆転を狙う」というより、「好きなカルチャーで、みんなが繋がれる世界を作りたい」というYAGOOさんらしさが出ていて、とても楽しみです。

正直、まだメタバースって何がどうなるか読めない部分も多いけど、YAGOOがやるなら追ってみたいなと思わせてくれる安心感があります。

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